2011年12月5日月曜日

つながる読書術

◎書籍情報
つながる読書術
日垣隆著
講談社現代新書(2011-11-20)
ISBN 978-4-06-288133-3

◎思ったこと
面白いタイトルだと思った。
タイトルの「つながる」とはどういうことか。
読書とは基本、ひとりだけで行うもののはずだ。
本書の言葉を借りれば、自分と本とのコミュニケーションが読書ではないのか。
それに興味を持って本書を手に取った。
本書では「つながる」という単語に対して、
前書きによれば5つの意味を込めているそうだが、
私が目次を読んで特に期待したのはそのうちの一つ。
人と「つながる」、即ち第四章のソーシャルリーディングについてであった。
また、読後にその本についてアウトプットをしたい、
ブログ等で公開することによって自分の中に残したいと
考えていた私に取っては第三章であるアウトプットについての
言及にも非常に興味をもったのである。



そもそも本を読むということに術等あるのだろうか。
ちまたには速読術、なんとかリーディングなどという言葉があり
私も専門書はもってはいるが正直懐疑的である。
誰だってその作者があげた例の上では早く読めるはずだ。
作者の土俵で戦い、作者が勝たせようとしてるのだから、
勝って当たり前だと考えているのである。
本に書いてある術なんてものは自分が、自分の読みたい本で
実際に使えなければ意味が無い。
何より、小説等をじっくりよんで余韻に浸る幸せはとっておきたいし、
頭の中でじっくりと考えずにそれで役に立つのか?
とっさの時に活かせるのか?と個人的には思っている。
私自身、確信しているが、そうした術が適した本と
適さない本があるはずなのだ。
では本書が述べる「術」とはどんなものだろうか。
そうした期待をもって本書を購入してみた。

本書は五章構成で内容を進めている。
第一章では読書の基本について。
要約すると素直に正確に読んできちんと中身を理解することへの言及。
第二章では読書賛歌。
本ってすばらしいよということを書いてある。
ここまではこれまでの読書、つまり独りで行う読書、
受け身の読書についての内容である。
となると、恐らく第三章では読書の発展系、能動的な読書。
第四章、五章で著者の主張について論じて行くのだろうと考えた。
ホップステップジャンプのホップが第一章、第二章、ステップが第三章、
ジャンプが第四章、第五章なのだろう。

結論から言うと、著者はジャンプに失敗したなという印象を抱いた。
少なくとも私の期待は満たされなかった。
期待した第四章はソーシャルリーディングについて書かれていたが、
「私はこうしている」というだけであり、実例としてはよいかもしれないが
誰もがすぐに行えるような内容とは言えないと思う。
たしかにソーシャルメディアの登場により発信は誰にでも可能になった。
しかし、可能と実施は別だ。
それをするためのインフラはやはり整えなければならない。
著者の言っていることは、つまりは読書会やろうよということなのだが
それを言えるだけのコミュニティを作らなければならない。
そのためのノウハウは自分で考えようと言われたらそこまでだが、
あまりに尻切れとんぼに感じた。
術を授けてくれる、論じてくれるのではないのかと。
第五章に至っては著者の電子書籍論である。術ではない。
学ぶ所はほとんどないと言ってもよい。

では、第三章はどうだったのか?
個人的には第三章が最も参考になった。
ステップで一番跳んでいたと言っていい。ただし、息切れしながら。
第三章の第一文で、著者は
"読書の質を向上させる要諦は、本との闘いに勝つ事です。"という。
この一文は私にとっては正直先制攻撃をくらった気持ちだった。
戦う、それは能動を超えた言葉ではないかと。
さぁ、どうやって本と戦っていくのかと期待して読んでみたのだが
次第に違和感を感じるようになってきた。
つまりは「書く」ことを意識して本を読み、人のネタ(本)を
自分のネタにしなさいということである。
人にもよりけりだと思うが、それは戦うとまで言える事なのだろうか?
私からすれば先制攻撃を喰らった後、逃げられたといった印象が強かった。
それもただ逃げられているというよりは退却戦をされているような。
著者の言葉はなかなかに強い。いや、きつい。
書いている内容も悪いものではない。
上記したように第三章は本書の中では一番参考になった。
しかし、その第三章ですらその強い口調に見合うほどの内容ではないと感じる。
読み進めるほど違和感がふくれあがっていく。
それはこの著者は信用できるのか?という疑問だ。

著者の職業は作家だということだが、文章に関しても
正直あまり上手な書き手だという印象も感じない。
むしろ、文章をかなりけずったのではないかと。
何より、書いてる内容と実際の文章に乖離を感じるのである。
思わず著者についてネットで調べてしまった。

本書で最も印象に残った箇所を一個あげろと言われたら
私はあとがきのこの一文をあげる。
"クズ本でも必ず学ぶべきところはある"
これがすべてを物語っていると思う。
本書から学ぶべき所はあった。今後も参考にさせてもらいたいと思っている。
とはいえ、良書かと問われたら疑問だ。
人に勧められるかと問われても、、、、申し訳ないが疑問である。
これが本書の第三章に述べてあった、本との戦いについての
私の結論であるといわざるをえない。


余談だが、後書きを見ると本来はこの数倍の分量の原稿があったらしい。
むしろ、そちらを見てみたかったという気がする。
編集によって体よく250ページそこそこに切られてしまったという感が強い。

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