2011年11月29日火曜日

人を動かす

◎書籍情報
人を動かす(原題:How to win friends and influence people)
D・カーネギー著、山口博訳
創元社(1999-10-20)
ISBN 978-4-422-10051-7


◎本書を手に取った理由
P.F.ドラッカーの自己実現本を読んでいて、コミュニケーションについての記述から
より深めて見てみたいと考えたため。


◎要旨とメモ
目次と章の最終が要旨である。
元々、この本はD・カーネギーが自身の講習会で使用するために適したテキストが
なかったことからカードを作り、それが冊子となり書籍となったようだ。

人を動かす三原則
・批判も非難も苦情も言わない
リンカーンのエピソードが興味深い(!)
「人を裁くな。人の裁きを受けるのがいやなら - リンカーン座右の銘」
・人の長所を考え、心から褒める
「己よりも賢明なる人物を身辺に集むる法を心得しものここに眠る - カーネギーの墓碑」
「どんな人間でも、何かの点で私よりも優れている。私の学ぶべきものを持っているという点で - エマーソン」
・人の立場に身を置き、どうすればそうしたくなる気持ちを相手に起こさせられるかを考える
「成功に秘快というものがあるとすれば、それは、他人の立場を理解し、自分の立場と同時に他人の立場からも物事を見ることのできる能力である。 - ヘンリー・フォード」
Win-Win


人に好かれる六原則
・人に心から関心を寄せ、興味を持つ
セオドア・ルーズヴェルトのエピソードが好き。これだけでこの人が偉大な大統領だったのだとわかる。
第一次大戦で敗れたドイツ皇帝の話も興味深い。実際にそうだったようだ。
「我々は自分に関心を寄せてくれる人々に関心を寄せる - パブリス・シラス」
・笑顔を忘れない
自分の微笑みには100万ドルの価値があるといっていたチャールズ・シュワッブ。
無名の事業員にもタバコをあげて気を使った話でも語られている。
・人の名前を覚える。それを忘れることは忘れられることである(!)
フランクリン・ルーズヴェルトの例もよい。
・主張するな、じっと聞け(!)
エドワード・ボック少年のエピソードがすごい。
・人が関心のあることを見抜き、話題にする
幼いフェルプス教授と弁護士の話がすごい。
・人に重要感を与え、心から褒める
いつでもどこでもやってみることだ。
「人を話をする時は、その人自身のことを話題にせよ。そうすれば相手は何時間でもこちらの話を聞いてくれる - ディズレーリ」

人を説得する十二原則
・議論に勝つには議論を避けて黙って聞くこと
「人にものを教えることはできない。自ら気付く手助けができるだけだ - ガリレオ」
議論に負けても、その人の意見は変わらない。
勝つか負けるかではなく、勝つか好かれるか。
・相手の意見に敬意を払い、誤りを指摘しない
フランクリンとクエーカー教の信者の話についての記述が興味深い(!)
・誤りを認める
どんな人間でも誤りの言い逃れくらいはできる。しかし、自己の過失を認めることはその人間の値打ちを引き上げ、
自分でも何か高潔な感じがしてうれしくなるものだ。
・穏やかに話す
相手を自分の意見に賛成させたければ、まず自分は彼の味方だとわからせることだ。
イソップ物語書いた人は紀元前600年前のギリシアの奴隷アイソーポスらしい。知らなかった。
・相手が即座にイエスと答える問題を選ぶ
Yes-Yes-Yes-"Yes"
・相手にしゃべらせる
・相手に思いつかせる
暗示を与えて結論を相手に出させ、花をもたせてやる。
現在ではプライバシーの問題で使えない例があった。
・人の身になる
相手の考え、行動にはそれぞれ相当の理由があるはず。
本当に相手の身になってみること。
・同情を持つ
我々が蛇でない唯一の理由は、我々の両親が蛇でなかったからだ。という一文がおもしろかった。
だから、相手の立場にいれば相手のようになるはずだという例え。
とはいえ、他の例に関しては微妙なところも見受けられた。
・美徳に呼びかける
・演出、サプライズを考える
・対抗意識を刺激する
相手に勝ちたいと思う気持ちを刺激して人を動かす。

人を変える九原則
・まずほめる
歯医者の局所麻酔に似ている。後でガリガリされるが痛みを和らげてくれるとの例。
・遠回しに注意を与える
チャールズ・シュワッブのタバコのエピソードがよい。
・自分の誤りを話した後、相手にそれとなく示す
・命令ではなく意見を求める
「こう考えたらどうでしょう」「これでうまくいくでしょうか」「これでどう思いますか」
・顔をつぶさない
「相手を私がどう評価するかではなく、相手が自分自身をどう評価するかである。 - サンテグジュペリ」
・わずかなことでもほめる
・期待をかける
「徳はなくても徳あるごとくふるまえ - シェークスピア」
・激励して能力に自信を持たせる
・喜んで協力させる
例としては微妙。つまりは報酬を与えるってことのよう。(?)

幸せな家庭を作る七原則
・口やかましくいわない
トルストイ、リンカーンの悪妻の例
・長所を褒める
ディズレーリの「私がお前といっしょになったのは、結局、財産が目当てだったのだ」という冗談が素敵。
・あら探しをしない
・ほめる
・ささやかな心づくしを怠らない
・礼儀を守る
親しき仲にも礼儀あり
・正しい性の知識を持つ

◎思ったこと
上記したように私はこの本をコミュニケーションのためのツールになればと思い手に取った。
読後は後は私がこの原則を習慣にできれば、十分その欲求、目的を満たしうる本であると感じた。
本書は上記したようにいくつもの原則を提示してくれているが
本質的に大切なことはほぼ共通でである。
要は相手の立場に身を置き、相手の立場から物事を考えることで、
自ずと人は集まり、人生の問題は解決できるということである。
この本質を手を変え品を変え見方を変えて示してくれている。
とはいえ中身にしつこさはないし、底の浅い本に見られるようなネタの使い回し感もない。
原則として多数用意しているが大事なことは結局…と、意図的にそういう構成にしているのだろう。

人は誰しも自分が行っていることを誤ったことだとは思っていない。
ならばそれを尊重すること。
つまり、人の気持ちや立場に立って、相手が望むことをしてあげること。
私は貴方に興味があって、貴方は私にとってとても重要な方ですと
暗に示してあげれば人は動いてくれるものである。
個人的に付け加えるならば特に社会的に上になればなるほど、
この原則は生きてくるのではないかと考えている。
孫子の兵法に"彼を知り己を知れば百戦にして危うからず"という言葉があるが
相手や周りに興味を持ち、自分はどう相手に関われるかを考えることが大事なことなのだと思う。

まず相手ありきなのだ。
相手をやっつけるよりも相手を好かれる方がよっぽど愉快であるとは本書の弁だが
戦う前に勝つ、戦いを避けるという孫氏の兵法に通じる部分があるという印象を得た。


タイトルの「人を動かす」。
原著のタイトルとは意味は離れている感じはあるが
このタイトルはよく出来てあると思う。
この後に読んだ「30代は話し方で9割変わる」では
コミュニケーションの目的は、人を動かすことだと書いてあった。
30代は〜の内容も本書から多大な影響を受けているように思える。
意識して記述したのではと思わざるを得ない。


正直、購入前はなんだかしらないおじさんの顔写真がでかでかと
緑色の装丁に載せられており
なんというか…見るからに古典であり、古くさい感じがしていた。
実は興味はあったがその表紙を見て何度か購入をためらったことも事実だ。
古くさいという点では前書きにも書いてあるのだが中身の例は古い。
私も例の人についてネットで調べたりといったことを行っていた。
その結果、フランクリンやリンカーン、セオドア=ルーズヴェルトについて個人的に興味が沸き
フランクリンの自伝を近いうちに購入してみようと思っているほどだ。
読後の感想としては今、本書を手に取ってよかったと思う。
これからの人生でも何度もお世話になるであろう名著だ。
勧められるかと言われたら10代後半以降のどの年代にも勧められる。
文字も大きく、中身も簡単で一日一原則ずつでも読み進められるようになっている。
自分の人間関係に満足している、これ以上改善の余地はないと思われる方以外は
是非読んでみていただきたい一冊である。



思うところは多々あるのだが今の私の文章、思考力ではこの程度の文章しか
思いつかない。
何度もこれから読み返し、他の本にいってはまた戻りと、さらに深めていきたい一冊である。

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